LCA(ライフサイクルアセスメント)とは
製品や商品、サービスの原材料調達から生産、流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクルにおける投入資源、環境負荷、結果としての健康や地球の生態系への潜在的な影響を、定量的かつ定性的に評価する手法です。
持続可能な開発の実現のために
持続可能な開発とは、「将来世代の自然環境や健康生活といった欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」のことを言います。個々の事業者が、この難題に取組む際、「道標」として活用できるものがLCAです。
SDGs側面から俯瞰したLCA
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。SDGs(エス・ディー・ジーズ)と読みます。SDGsは2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。目標は次の画像のように全部で17つあります。これらの目標に対して、事業を行う個社が、どのように「アプローチ」していけば良いのか「見える化」する手法の1つにLCAがあります。
1~6の目標
7~12の目標
13~17の目標
環境会計への利用
環境会計とは、企業などの組織が環境に関する社会的責任を果たしつつ、環境保全の活動を効果的・効率的に推進するため、環境負荷や環境保全の費用と効果を把握するための手法です。環境活動と経済活動を連係する環境経営手法として重要な取組です。LCAの結果は、その環境保全の活動の、「取り組むべき内容」を見える化することが出来ます。
環境管理会計への応用
環境管理会計は、貨幣単位会計である従来の会計と、物量単位会計を現す「他の会計ツール」との中間に位置付けられたものです。貨幣単位と物量単位の両方を集計する複合的な会計と言えます。会計の仕方等は決まったものが存在するわけではありません。個々の事業者が事業者内で意志決定する際に、「判断する基準」として発展している経緯があります。LCAは、この会計において環境負荷物質等の物量的な量と影響度度を提供します。
以下に主に環境管理会計で扱われる2つの手法を紹介します。
・ライフサイクルコスティング
ライフサイクルコスティングは、製品や商品、サービスの企画・開発、生産、使用、廃棄までの一連の流れの中で発生する「コスト」を集計する手法です。ライフサイクルアセスメントに経済的視点を付加したものと言えます。事業者のライフサイクルを分け、原価を積み上げて集計していきます。事業者の側面では、製品の企画・開発、生産、販売までのライフサイクルコスト、消費者の側面では、購入、使用、廃棄までのライフサイクルコストが重要です。社会的側面からは、自然から原材料の採取(自然資本の採取)・生産者・消費者(廃棄後に処分されて自然に循環するまで)の全体のコストに分けられます。LCAは、このコストの積算情報と付き合あせることで、経済的なロスを発見出来る等のメリットを生み出します。
・マテリアルフローコスト会計
マテリアルフローコスト会計は、投入された原材料類(マテリアル)を物量で把握し、マテリアルが事業者内もしくは、製造プロセス内をどのように移動するかを貨幣と物量で測定しながら追跡する手法です。環境コスト評価として投入と産出の結果を比較するだけでなく工程段階の階層下で隠れていたロス(廃棄物コスト)を可視化することに特徴があります。なお、このマテリアルロスを「負の製品」と言います。この負の製品の発生工程は、LCAの算定結果においても、環境負荷が高い工程であることが多く、LCA的側面から俯瞰することも可能です。
==以下 旧ウォーターフットプリント実践塾より==
ウォーター・フットプリント概要
身近な商品やサービス等にどのくらいの量の水が使われているかを知るためには『ものさし』が必要です。
また、その使用した水が採取した地域や国の水資源にどの程度の負荷を掛けているのか、更には、水を介した環境汚染がどの程度あり得るのか、これらの『ものさし』が、ウォーター・フットプリント(*)です。
(*)ウオーター・フットプリントは、原材料調達から、生産、破棄、リサイクルまでの商品一生分の水使用量を算出し、水資源への負荷を定量化する手法です。
『少しでも水の現状に気がついて。考えてもらいたい』 これが私達からのメッセージです。
環境影響の最大の死因は水
環境影響最大の死因は水です
右図は水が要因とする死因の損失余命を表したものです。世界全体の中でも12.3%を占め、エイズを要因とする損失余命の何倍にもなることがわかります。日本は衛星状況が整っており、水が要因で『死』を連想することは難しいですが、これが実情なのです。
このような水が環境へ及ぼす影響を考察する手段の一つが、Water Footprint(水の足跡)なのです。
水は限りある資源である
水は限りある資源…
皆さんは地球上にある水のうち、人間が使うことのできる水の量を考えたことがありますか?
地球上に水は約13億8600万k㎥あると言われています。そのうち淡水はたったの2.5%です。
しかしながら、その淡水すべてを使えるわけではありません。それらの淡水は、氷河や永久表土層または地下の帯水層に蓄えられており、わずか0.4%しか人は利用することができないからです。
水の地域偏在(水ストレス)
日本は世界的にみて水に恵まれた国であると感じたことはありませんか?水道をひねれば気軽に水を手に入ることが可能ですし、海に囲まれた島国であることが理由かもしれません。
しかしながらこの認識は間違っています。日本国内でも毎年、夏に節水または、断水に直面する市町村(例 松山市)も多々あるからです。これは水の取水量が淡水の供給量を上回ってしまうからです。この水の利用に支障が発生する状態を『水ストレスが高い』状態と言います。
では世界的にはどうでしょうか? 日本よりもさらに水ストレスが高い地域があることが、上図の水ストレスマップより把握できます。
このように水の各種問題にどのように対応・改善を図っていくか、その方法の一つが、Water Footprint(水の足跡)なのです。
例えばトウモロコシで考える
2014年5月1日の米国科学誌サイエンスに『遺伝子組み換えや作付け技術の向上のおかげで、トウモロコシの栽培量を従来よりもさらに増やすことが可能になっているが、同時にトウモロコシの干ばつに対する耐性がますます低くなっている』と米スタンフォード大学(Stanford University)のデービッド・ロベル(David Lobell)氏率いる研究チームが論文で発表しました。
「高密度に作付けされたトウモロコシは、予想外に水不足の影響を受けやすくなっているように思われる」とのことです。
水不足が進む地域での作付けを止め、水が豊富な地域にシフトが叶うなら、この問題は簡単に解決しそうですが、産業として栄えた今、シフトは簡単なことではありません。
また、水不足に耐性を持った遺伝子組換えトウモロコシの開発も危惧されます。
このように水が原因で生態系や自然環境破壊の側面を考えることが可能なのです。
また水の採取地をグローバルで考えていかなければ、世界全体での水資源の保全には繋がらないことを理解して欲しいのです。